恋愛の神様
目の縁に盛り上がったモノが、あっという間もなく堰きを超えて溢れだした。
「………っぅ……」
アスファルトに落ちるボタッという音が聞こえるくらい大きな滴が後から後から落ちてゆく。
ずっと思い描いてきた終焉。
覚悟は付けてきた筈なのに、現実の痛みは想像をはるかに超えていた。
「っく………ぅえっ……」
嗚咽を上げてその場にしゃがみこんだ。
周囲の人が驚いたように距離を開け、奇異な視線を投げて行くのが分かったけれど、止められない。
スミマセン、ゴメンナサイ。
イイ歳の女が路上で号泣なんてミットモナイでしょうけど、ほっといて下さい。
私、こんな歳になってもイイ大人になんかなれない。
弱くて、愚かで、情けない女なの。
大好きだったのに。
アノ人が好きで堪らなかったのに。
そう叫んで追いかけて行く勇気が何故、出なかったんだろう。
こんなトコロで無様に泣くくらいアノ人が好きだったのに。
酔っ払い程ミットモナク号泣している私の前に人が立つ気配がした。
どこかの親切な人が見るに見かねたのかもしれない。
だけど、ほっといて。
ウルサイわ。
「―――――オマエってヤツは、俺には何も言えないくせにこんなトコロで体裁もなく泣き喚けるんだな。」
頭上から落ちてきた平板な声に、心臓が一突きにされた。