恋愛の神様
聞き覚えのある声。
嘘。
何故!?
私は狼狽した。
勿論、顔なんてあげられない。
業とこんなところで泣いたんじゃない。
迷惑を掛けるつもりなら、最初からレストランで暴れてるわよ。
さっきは一言の言い訳もなく別れたくせに、何だって今更追いかけてくるのよ。
て、私は何だって最後だってのにこんな醜態を晒さなきゃならないの!?
固まったまま動かない私の頭に優しい手が置かれた。
「オマエ、俺の事好きだよな。」
刺されたトコロから血が溢れるように、その言葉に気持ちが溢れた。
虎徹クンが好き。
レオじゃない。
他の誰でもない。
私が寂しくないように構ってくれる人が好きなんじゃない。
言い訳一つしてくれない冷たい男でも――――
アナタじゃなきゃイヤなの。
「………き、好き……スキ………っ!」
「だったら、別れる事はないだろう。…………俺もオマエが好きだ。」
私は思わず顔を上げた。
化粧崩れはおろか、鼻水だって出てるような無様な顔で。
一点の曇りもないような平静なポーカーフェイスに、私は辛くなってクシャッと顔を歪めた。
「…………でも…っ!」