恋愛の神様
その光景を見ていた俺は何とも羨ましい気持ちになったものだ。
この人の仁徳だよな。
この良くも悪くもカラッとストレートなトコロは。
俺もこの人みたいにスカッと水に流せばヨカッタんだ。
無事に戻ってくれた事だけを素直に喜んどきゃヨカッタ。
だが、生憎、そんな度量は俺にはなかった。
戻ってきた安堵と、俺じゃない誰かに可愛がられてた事に腹を立てたのと、俺に対するよそよそしい態度を不安に思ったのと―――色々な感情がごちゃ混ぜになって、制御の余地もなく爆発していた。
分かってんだ。
野山が誰に拾われたかはさて置き、俺が傷つけて俺から逃げ出そうとしたんだってことくらい。
その俺が責められた義理じゃない事くらい。
なのに俺は野山を強引に組敷いて、八つ当たりみたいにその身体を責めた。
野山は泣いて赦しを請うていたのに、それすらも聞き捨てた。
行き過ぎる快楽に泣くのとは違う。
本気で怯えさせて泣かせたのはコレがハジメテだ。
無論、他の女にだって経験はない。
どうしてあの時、あんなに凶暴にアイツを求めたのか、自分でも自分がよく分からない。
『お願いです……止めて……下さい。』
繋がろうとするのを、まるで凶刃を突き付けられた捕虜みたいな顔で怯えた。
野山に拒否されたのはハジメテだ。
途端、肉欲だけじゃないもっと残忍な気持ちに駆り立てられた。
もう、新しい男がいるから俺は用無しってか!?
そんなにアイツは良かったのかよ!?
一見人畜無害そうな白い男を思い出して一層腹が立った。
知り尽くした身体を力付くで暴いて、野山が快楽に飛ぶ度に残忍な愉悦を覚えた。
アイツに操を立ててるのかもしれないけど、オマエの身体は俺に従順だぜ、チィちゃん。
そんな黒い感情も、正気もなくぐったりベッドに沈む無残な小鳥の姿にようやく我に返った。
冷静になって思い返せば、抱くにしたってもっと別にやり方があったろーよ…と後悔だけが募った。