恋愛の神様
二之宮虎徹
※※※kotetu ninomiya※※※
珍しいヤツからの呼び出しで、俺は仕事を切り上げ、指定された場所へ向かった。
繁華街のスカイラウンジ。
相手は既に来ていて、何をするわけでもなく俺の到着を待ち構えていた。
「悪い。待たせたな。」
俺の声に相手は顔を上げ、「いや」と首を振った。
「コッチこそ……忙しいのにいきなり呼びだして悪ぃ。」
そう謝る零於は多少緊張気味ながらも以前ほどの棘はない。
正直ちょっと拍子抜け、だ。
否、何の話なのか益々見当がつかなくなった、と言うべきか……。
「一体何の用だ?オマエが俺を呼びだすなんてメズラシイにも程がある。」
適当なコースを頼みワインを揺らしながら俺からそう切り出した。
今、亜子は俺の手の中にいる。
何も聞かないまま、何も言わせないまま……
だが、穏やかで落ちついたその顔を見る限り、彼等の間でもまた何某の決着はついたのだと知れる。
亜子を返せと難癖つけてくるのかと思ったが、今、眼前の零於を見る限りそういう訳ではないらしい。
尤も、そんな事を言いだすキャラじゃないから、呼び出しの時点で怪訝に思いはしたのだが……。
よもや人の女に手を出したことを謝るというキャラでもない。