恋愛の神様


「ん?ああ。アンタって風習とかならわしとか重んじるタイプか?」

「……なんの話だ?」

「だから、結婚。血は半分しか繋がってねぇけど伊熊の子供として年長者から結婚するモン、とか考えてんなら早急に結婚してくれ。それこそ数日のうちに。」

「………………………………。」


思考が付いて行かず米神を押さえる。


「……いや、結婚に年功序列は考えてナイ。…の前に、いつから結婚準備期間は日単位になったんだ。」


さすがに性急すぎだろ。そりゃ。

というか、何でいきなり『結婚』だ。

俺の困惑を一掃するように零於はぺろっと言った。


「結婚する。」

「………。」

「赤ちゃん出来たから早急に籍入れたいんだよ。」


納得するより更に困惑が深まった。


「………相手は、亜子じゃない、んだよな?」

「ああ、チガウな。」


コイツ、亜子のケツ追っかけまわしてたと思ったら、ちゃっかり孕ませるような女もいたのか。

………要領のイイヤツ……。

はぁ、と深い溜息を吐いて零於に向き直った。


「堕ろさせることは考えてないのか?」

「は?堕ろす?ジョーダンだろ?成り行きとはいえコレで確実に捕まえられる。」


商談を取りに行く営業マンほどの気合を見せる零於に、俺はやはり固まる以外にすべきがない。

昔はともかく、俺の前では頑なにポーカーフェイスを装って格好を付けるコイツが……
多分、亜子や他の女の前でもそのスタンスを崩さないだろうコイツが。

羨ましいくらい生き生きと素直な表情をする。

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