恋愛の神様
わたわたしながら謝って、オッサンは草賀さんの影になっていたワタクシに目を留めました。
「コイツは会社の後輩。」
「野山小鳥と申します。」
「私は草賀一蔵と申します。さ、ここではなんですし、どうぞお嬢さんも中へおはいり下さい。」
いちぞー?
一瞬どこかに引っかかりましたが、気の所為かとその時はスル―しました。
ニッコリほほ笑みかけるオッサンにワタクシは「はい」と頷き、お邪魔させていただくことになりました。
下で接待するというオッサンの申し出を断ってワタクシ達は二階へあがりました。
連れてこられた部屋の入り口でワタクシは唖然と立ち尽くします。
服服服。
服の山。
あり塚のように部屋のいたるところで服が堆く積まれております。
量はさておき、恐ろしい程に雑然としています。
もはや人の生息区域ではありません。
さすがの草賀さんもこの有様には乾いた笑みを浮かべております。
「妹の部屋だ。こんだけ服があれば色々試してみられるだろ。」
そこでワタクシは草賀さんの真意を悟ります。
繁華街の服屋を梯子するのは骨が折れます。
その度にハイエナのように近づく店員さんとの攻防も煩わしいコト然り。
それら一切の無駄を省き、この服山でセンスを磨けということなのです。
巳紅さんという草賀さんの妹さんは現在、専門学校生―――被服を勉強なさっているとかで。
これはプロです!
「さて、ここなら無駄打ちオッケー。巳紅が帰ってきたら、相手させるから自分なりに色々見て、とりあえず服に慣れとけ。」
「ありがとうございます。」
部屋を出て行く草賀さんにぺこんと頭を下げました。
心から。