恋愛の神様
「おー……」
前を行く草賀さんはワタクシの言葉に生返事です。
今日は式の間からソワソワして、時に何か思い詰めた表情をなさっていました。
ワタクシは覚悟を決めて草賀さんの前に躍り出ました。
「……それはなんのマネだ?」
目の前で両手を広げたワタクシに草賀さんが怪訝に尋ねます。
「分かっておりますとも!割り切ったとはいえ、過去に関係の合った女性の結婚式、何も感じない筈ございません。さあさ、ワタクシの胸で思いっきりお泣き下さいませ!!」
「………よもや全然違う。」
草賀さんは深い溜息を吐いてワタクシを追い越してゆきます。
「ええっ。違うんですか!?てか、思いっきり外したワタクシの立場がございませんヨ。」
歩いていた草賀さんがピタリと止まり、すたすたと戻ってまいりました。
「オマエ、あの紙どーした?」
「へ?あの紙……?」
「半年前の。」
「あ。…記念にとってありますけど…」
あの紙とは半年前のあの結婚届けの事でしょう。
いつでも出してイイとはおっしゃってましたが、あれきりお互い仕事も忙しかった事もあって保留になったままです。
「チィちゃん、手出せ。」
「へ?」
意味がわからないながらも先ほどのように両手を広げて見せます。
すると草賀さんはその片方の腕を掴み、ポケットから出したご自分の手を乗せました。
「え?………これは…」