恋愛の神様
掌にあるのは小さなジュエリィーボックス。
「年功序列じゃねぇとは言ってたが、一応世のならわし通り兄貴が片付いたわけだし、俺側にもう待つ理由はねぇ。正式に結婚を申し込む。」
ワタクシはぽかんとしていつになくマジメな草賀さんを眺めます。
「草賀さん。」
「なんだ。」
「式の間ずっとこの事を考えてらっしゃったんですか?」
式の最中に見せた思い悩むような表情。
あれはまさかコレを渡すタイミングを見計らっていた、とか?
むぅっと草賀さんが口を尖らせました。
「うるっせぇよ。仕切り直す事になって、それなら虎徹が片付くまでイイかとは思ったけど、俺の気持ち的には半年前でもヨカッタんだ。オマエはオマエで一向にアレ出す気配もねぇし!つか、仕事面白いのかもしれねぇけど、結婚の事は頭からすっかり除外してんだろ!?」
ぎく。
「…いやぁ~……そんな事はございませんけども…」
「ございますね!」
……ぅぅ。
「だ、だって仕方ないじゃないですかぁー。草賀さんと違って、クマ部長の理不尽について行くのに必死なんですよう。」
「だからっ。そんなコト言ってたらいつ結婚できんだよ!!あのクマに余裕でついてけるヤツなんざ、この世にいねぇっつーの!!」
往来で人目を憚らず口喧嘩勃発です。
「……はぁ。止めるか……今、結婚申し込んでんだもんな、俺。」
「……そうですね…。」