恋愛の神様
数年前には自由に社内を飛び回っていた野良の青い鳥が俺のオクサンになって早一年強。
「まぁ、そんな時期だ。新婚過ぎて、互いに目が覚めるっていうか冷静になるというか……ま、我慢のしどころだな。」
……なんかやけに実感籠ってんじゃねーの、オニイサマ。
って、
だから、そんなんじゃなくて、だな。
何だか妙に同情的な顔に内心小さく舌打ちする。
俺はコーヒーを呑み下し、兄貴を見上げた。
「んなぁ……アンタ『子はカスガイ』ってどー思う?」
「子供……?」
虎徹は視線を宙に放って暫し考えこんだ。
「ありゃ、人間じゃないな。まるで意志疎通が出来ん。その上煩くて我儘で。本能で動く恐竜だ。でもそうだな、……それでもスゴク愛おしいと思える。それに子供の目があると無駄な夫婦喧嘩は自制されるってのはあるな。」
虎徹ントコロは、結婚してから直ぐデキタ。
というか、結婚式のときには既にデキてたらしいが、まるっきり気付いてなかったらしい。
そんで新婚気分を味わう間もなく出産して、今では一児のパパ……いや、双子だったからこの場合いきなり二児のパパなのか。
虎徹はそこまで言って何かを思い出したように、俺に視線を戻した。
「あー……まぁ、天からの授かりものとか言うし、あまり思い詰めない方がいいんじゃないか?」
付き合う切欠が妊娠騒動だったくせに、結婚しても未だにデキないのは俺達の方で…。
綿密な家族計画なんてないけど、子供は早い方がいいな、という意見は一致していた。
そんで二人の間では子作り、が密かにブームになってたりする。
例えば、旅行先で近くに子宝祈願の神社があったら、ついでにちょっと足を伸ばしてみるとか、これは妊娠に有効な料理だから試してみよう、とか。
正直、そこまで思い悩んでいるワケではなく、おおよそノリ、で。