恋愛の神様

巳紅の高い計算能力を今回ばかりは誉め讃えよう。
そしてお洒落に関する目の高さも。

確かに巳紅の言うとおり胸はそこそこあったようで、些か胸元が開いた服だが目を覆いたくなるようなみすぼらしさはない。

問題はその下に続く寸胴なのだろうが、唯一段差のある胸下で絞め、ふわっと広がった服なので目立たない。


肩越しのオカッパはふんわり大きな内巻きカール。

控え目な色遣いの薄化粧だが、もともと子供並みに綺麗な肌をしていたので十分だ。

ふーん。
普段ののび太君眼鏡を取ると、こんな顔してたのか。

それほどデカイ目でもないが、その分黒眼の面積が多くて―――まるで、ぬいぐるみの目に付けられたボタンみたいだが―――可愛いと言っても良いだろう。


「いいんじゃん。」


俺の素直な感想に、レポートの評価を待つ生徒みたいに固唾を呑んでいた野山がぱあっと表情を明るくした。


「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」


その横で巳紅も鼻高々にふんぞり返っている。


「さて……今日のミッション終了―――で、どーする?このままここで適当に飯食わせてもらって帰ろうかと思ってたんだが…」


野山を横目にふっと笑う。


「オマエ、せっかくお洒落したし外出たいんだろ。」


野山が拝むみたいにうんうんと頷く。


「プロの手にかかってもどうにもならなかった場合は一生部屋に籠ろうかとか思いましたが、ここまで成功したからにはお披露目がしたいです!」

「それは俺も同意見だ。」


巳紅でもサジを投げたら、箱にでも入れて家まで郵送して、一生出るな、とでも言うところだったが、な。


それで巳紅に上着とバックも追加してもらった。

上着はチュニックの姫袖を加味してケープ系。
形は可愛いが黒のベルベットなのでまるっきり子供染みた雰囲気ではない。


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