恋愛の神様
「ヤダ。寒い。チィちゃん温けーもん。」
「ワタクシはカイロ入り抱き枕でも、ぬいぐるみでもありませんヨ!」
草賀さんはぬくぬくと無邪気な顔でワタクシを締め付けます。
会社で見るよりずっとあどけない顔です。
しかし、そんなものにトキメイテいる場合ではありません。
一糸まとわぬ互いの身体が寸部の隙もなく密着しております。
胸も腹も腰も……あうあうあう。
「……ていうか、まさか草賀さん、だったなんて……。」
非力なワタクシはまんまと捕獲された腕の中で、小さく呟きました。
色々な意味でショック、デカ過ぎます。
入社してから三年目。
日夜探していた運命の人がこんな近場に転がっていたなんてうっかりです。
確かに、試験に来た田舎者を誑かすような悪者ですので、堅実な人だとは思っていませんでしたが、女たらしの代名詞ともいえる草賀さんだったなんてスキル高過ぎです。
上手い筈です、納得です。
多分…ワタクシは無意識に草賀さんを候補から外していました。
たとえそうであっても所詮手に入らないのだから、もしかして、と思うことすら拒否して見ないふりをし続けたワケです。
万が一、手に入ってもこれほどモテル方ですと心労が絶えませんよ。
ピクリ、と腰に回った腕に力が籠りました。
「なぁんだ?初体験が俺じゃ不服ってか?」
「い、いえっ……そういうわけでは……!」
初体験!!
やっぱり致してしまったわけですね。
夢ではなく。
今更ですが身を焦がすような羞恥に襲われ、慌てふためきます。