恋愛の神様

すると拘束が解け、上体が起こされました。

草賀さんも追うように起き上がって、ワタクシの前へ座ります。

何でしょう……。

草賀さんが笑顔なのはぼやけた輪郭で分かりますが、あてられるオーラはチクチクと刺すようにイタイです。

ひょっとして怒ってらっしゃいますか?
笑顔で…。


「チィちゃん。二年前の男って誰?」


はい?
……現在も昔も男なんておりません。

そう言いかけ、はっとしました。

カレシではなく運命の人の事でしょうか。
というか、それ以外にありません。

それなら目の前にいますよ。

……と言えるはずもなく、言葉を濁して視線を反らします。


途端に剣呑な空気が濃度をましました。

うう……。
息苦しいです。
酸素プリーズ!

「言え」と命令されるより無言の圧力は脅威を発揮しました。

酸欠に耐えられず、ワタクシは白旗を上げて全面降伏です。


「……草賀さん、です。多分。おそらく。」

「アァ?俺は今の話をしてンじゃなくてだな――――」

「多分!草賀さんなんです!……ワタクシも気がついたのは先ほどなんですが……」


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