恋愛の神様
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そして数分後のコトです。
ワタクシは茫然自失の体で立ち尽くしていました。
コの字型……いえ、アーサー王でもあるまいに円型のデスク。
いえ、ワタクシのいるトコロが欠けておりますので正確には馬蹄型というべきでしょうか。
白色蛍光灯がオフホワイトの室内を照らすなんとも清涼感溢れる空間。
歯医者さんを思い出し居心地の悪さは抜群です。
そして、スーツ姿の野郎共が雁首を揃え、闖入者の小鳥を奇異の視線で射抜いております。
ワタクシだって好きで迷い込んだわけじゃないんです。
連れてこられたんですよ、森のくまさんに!!
ワタクシはホワイトボード脇を睨みました。
森のくまはボード脇の椅子にふんぞり返るようにいぎたなく座っております。
いきなりワタクシが拉致られた先は北の果てではなく、営業一課―――企画推進課とも言われる課の企画会議でした。
唖然とするワタクシにクマは平然と言いました。
プレゼンをしろ―――と。
はぁい???
何故ワタクシが!?
一課の使いっぱとなるのが営業二課で、一課が本決めした企画を稼働させるまでの外部との連絡係を伝書鳩のように勤めます。
そしてワタクシの勤めるのは、営業事務課です。
総務事務課とはまた別で、営業課専門の事務的なお仕事をサポートする課です。
一課や二課の書類作成などの事務、取引品の個数、流動把握、単価計算などなど。
単なる下っぱ雑務要員です。
なので営業と名がつくとはいえほとんど内勤、外回りに出ることはありません。
そんなわけで明確な企画内容ですら知らないワタクシに、一体どうしろと?
唖然とするワタクシにクマは書類を無造作に放り投げてきました。
『内村が腹イタで休みだとよ。というわけでオマエ以外にこの企画を知るヤツァいねーんだ。分かったらシャキシャキ始めてシャキシャキ終わらせろ!』
文句があるならアノチキン野郎に言え、プレゼン怖くて仮病なんざ使いやがって!というクマの罵り声が、書類を見下ろし愕然とするワタクシの耳を素通りしてゆきます。
クマが投げて寄こしたのは、週末ワタクシが纏めたものでありました。
死ねっぇぇぇぇぇ、うーちーむーらぁぁぁぁぁぁぁ!!!
そんなわけでワタクシは、どう考えてもお門違いの営業一課プレゼン会議を務める事に相なりました。