恋愛の神様
何の取り柄もないから勉強だけは小さい頃から頑張って、その甲斐あって一応才女で通っていたし、それなりに仲のよい友達はいたし、内弁慶なりにイイ雰囲気のボーイフレンドもいた。
同じサークルの先輩。
おおらかで気さくで、人付き合いが苦手な私でも直ぐに打ち解けられた。
告白はまだだったけど、お互い意識しているのは分かっていたし、後はほんの少しの切欠だけ―――そんな関係。
特筆すべきもないけど平穏な毎日。
それがずっと続くのが幸せな人生だと思っていたし、私の人生だと思っていた。
カレと会うまでは――――。
※
「小宮君。」
選択科目の教室へ行く途中、見知った顔を見つけて声を掛ける。
「教授が探してたわよ。レポートの提出締め切るぞ、て。」
「えっ、うわ、やば!忘れてた!犬飼サンキュー。」
慌てる同期をまったくもうと呆れ顔で眺めていて、不図、隣からの視線に気づいて顔を向ける。
最初は睨んでいるのかと思った程の無表情。
整った顔立ちをしていて、それだけにちょっと怖かった。
警戒したのに気付いたように小宮君が笑う。
「ああ。コイツ同期。知らね?二之宮虎徹っての。二之宮、こっちは―――」
「知ってる。犬飼亜子、だろ。」
何の感慨もなさげな淡々としたカレのセリフ。
「同じ科目を取っているから何度か教室で見かけてる。」
「え?………そうなの、ゴメンなさい。」
「何故、謝るんだ。」
いや、だってそれは……
相手が知っていたのにコッチは知らないなんてシツレイじゃない?
そりゃ、謝ることでもないかもしれないけど……。