恋愛の神様
第一印象は最悪。
なんか、もう、どこが、という理由でもなく、この人の事を好きになれないと思った。
そして第二印象も最悪だった。
学部も一緒で取っている科目も一緒では、嫌でも顔を合わせる。
どうしてそれまで気がつかなかったんだろう、と思うほど顔を合わす。
二度目に言葉を交わしたのは講義の時間。
いつの間にか隣にいて、講義の内容について尋ねられた。
尋ねられたというか、自論を振られ、釈然としなかったから自論で返した。
後は気付かないままお互いエスカレート。
自論に次ぐ自論。
反論、自論、反目、反目……
我に返った時には、二人して教室から追い出されていた。
最っっ悪……!
「……くっ……」
詰めたような声を聞いて、私は睨むように隣を見た。
口に拳をあてて、噴き出すのを堪えて震えている姿。
初めて見たカレの笑みに心臓が大きく高鳴った。
冷やかなポーカーフェイスよりずっとあどけない表情。
とうとう堪え切れず笑いだしたカレに釣られるように私も笑ってしまった。
それを切欠に顔を合わせると色々な事を討議する仲になった。
広い視野、深い考察、知識。無駄がなく合理的な考え方。
悔しいけれど、カレの考え方にはやり込める隙がない。
それでも才女と呼ばれたプライドで私は食ってかかる。
簡単にやり込められないように、カレに会う時はいつだって細胞の一つ一つが活性化して、目まぐるしく動き出す。
心地よい。
全力で立ち向かう事の充足感。
それまで幸せだと思っていたヌルイ日常とは違う束の間の合戦。
サークルのボーイフレンドに誘われたのはそんな折りだった。