恋愛の神様


「今日ウチに来ない?」

「え?」


一瞬、本気で言っている意味が解らなかった私は相当抜けていたと思う。

何を今更……といいたげな彼の苦笑に我に返った。


……そうよね。
何を今更……。

その時、まざまざとその先が読めた。

多分、家に行ったら、愛の告白を受けるのでしょう。

彼はとても真剣な顔付きで私を真っすぐ見詰めて、私が望む言葉をくれる。
強く優しい腕で抱きしめながら。

ひょっとしたら、そのまま五年も付き合って、結婚するかもしれないわ、この彼と。

そんな推測が夢物語でもなく出来る。
この彼はそんな人だ。

時折口喧嘩もしながら、それでも『私って幸せだわ』としみじみ思いながら歳を重ねて行く―――幸せな日常。



彼の家に行く時間を決めて、別れた。

講義の間、私は何故か酷く沈んでいた。

優しい彼氏。
平穏な日常。
幸せな将来。

一体、何が不満なの?


帰り仕度をして教室を出た。

ぼんやり歩いていると、不意に強い力に腕を取られて、私は近くの誰もいない教室へ連れ込まれていた。

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