恋愛の神様
ぶつぶつ文句を思いながらエレベーターで上がる。
部屋に辿り着く頃には怒りも収まって、代わりに溜息が洩れた。
つったって、俺が責められる義理でもねーよな。
時間は既に十一時を回っている。
女と待ち合わせの時は、たとえそれが性欲処理が目的の相手だとしても酒を飲みに行くだとか食事に行くだとか、デートっぽい事も多少する。
少なくとも『残業あるからいつになるか分からないけど、家で待ってて』なんて手抜きはしなかった。
たまにはご機嫌取りしてやらんとなーと思いつつ、こっちの都合を押し付けるだけだ。
―――見下している。
はいはい。
その通り。
俺はたぶん野山を対等の立場には見ていない。
既に自分のペット感覚で、構うもほっとくも飼い主の俺次第という身勝手さ。
俺は野山をどーする気なんだろうな。
少なからず分かっている事は、亜子と天秤にかける時があったら迷いなく野山を捨てるだろう、ということ。
分かっていて、暇を見つけちゃ野山を呼びつける俺はサイテイ野郎だ。
溜息を吐きながら明かりのついたリビングに踏み込み、俺は立ち尽くした。
「…………何だ、それ。」