Amarosso~深い愛~を召し上がれ♪


「そうですよ、スペイン人と東洋人のハーフです。
 日本人ではなくて韓国人らしいですが。
 その店に行くときは、ご丁寧に車の中で大量生産のスニーカーに履き替え、ウィンドブレーカーを羽織り、隠せない上等な生地のスラックスは、毎回同じのを履いていき、あたかもそれしか無いようにしています」


フレッドは机の上で書類をそろえた。


「その彼女には自分が何者か知られたくないんですよ。
 普通の会話をするのが楽しいんでしょうから」
「でも、だったら」


ニコラスがためらいがちに口を挟む。


「そういうんじゃないんだろうな」
「そういうんじゃないんでしょうね。
 もう1年経とうというのに、割り切れないんですよ。
 自分でも予想できなかったほどに」


フレッドは立ち上がった。
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