あなたの子どもを抱く日まで
第一幕 華麗なる再会

お引越し

「お荷物はこちらで最後となります」


カーテンを吊るす手を止め、私は男を眺めた。


「お手数てすが、下ろし忘れがないかトラックの荷台をご確認いただけますか?」


目尻にシワを寄せ、日に焼けた笑顔に鍛え上げた筋肉が作業着の上からでも分かる。


年は40くらいだろうか。大抵、引っ越しやは中年と若手のペアで来る。


コミュニケーションをとるのは、もっぱら中年の方の男だ。


「はーい、いきまーす」


口角をきゅっとあげ、にっこりと笑顔で微笑みかける。


あの男が好きだといった笑顔を、私は行きずりの男たちに垂れ流している。
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