君と奏でるノクターン
「話にならない。親の七光りだって言われて何が名誉だ」


「だったら、彼と差しで弾いてみればいい。自分の実力も、彼との実力の差も確認できるぜ」


「確かにな」


「おいおい、本気か?」

ミヒャエルが目を見開く。


「悶々としていたって、何も拓けないなら……一か八か試す価値はある」


「マジかよ!?」


「越えられないと、ただ指を加えているよりマシだ」


「滅茶苦茶だ、正気の沙汰じゃない」


「君が言ったんだ、『差しで弾いてみれば』って」


「うっ……あははは。やっぱり見た目のイメージと中身のギャップが半端ない」

ミヒャエルが大声で笑う。


「昼飯、俺まだなんだ。ゆっくり話そう。此処では体も冷える」


「帰って練習を……」


「まあまあ、そう言わず」


「大きなお世話だ」


「お前には息抜きが必要だ」

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