君と奏でるノクターン
「よお、ミヒャエル」


「随分、毛色の違う連れじゃないか」


「ギムナジウムの学生は立ち入り禁止だぜ」


「あはは、違う違う。大学の友人さ」

ミヒャエルは常連客だな、詩月は思う。


「ほお、何か弾いてみるかい!?」


「詩月、奥の席が空いてる。座って待ってろ、適当に注文してくる」


「……ああ」

詩月は戸惑いながら、ミヒャエルに指示された席を目指す。


「ミヒャエルの知り合いかい!?」


「ええ、まあ」


「一杯、どうだ!?」


「あ……、この後バイトがあるので」

詩月は客の呼び掛けを交わしながら、席へ急ぐ。


――いちいち相手にしてたらキリがない

詩月は深く溜め息をつく。


ふいに立ち止まり、肩から背負ったヴァイオリンケースから、ヴァイオリンを取り出す。

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