君と奏でるノクターン
――ミヒャエル……あいつ

詩月はミヒャエルを睨み、ヴァイオリンを握りしめる。


場は既に、ヴァイオリン演奏で申し分ないくらい出来上がっている。


店内の客は「周桜詩月」と呼んだミヒャエルの声で、詩月に集中している。


ヴァイオリン演奏で詩月が自ら暖めた、店内の雰囲気。


ピアノを弾かない訳にはいかない空気が、詩月の胸を熱くする。

ミヒャエルが、ゆっくりと詩月に近寄る。


「さあ、続きを弾けよ。お前の『ショパン「エチュード·木枯し』を弾いてみろよ」


ミヒャエルは詩月の手から、ヴァイオリンを抜き取り、背負ったヴァイオリンケースを外す。


「……ミヒャエル」


「ヴァイオリンは仕舞っておいてやる。ショパンを弾いてこい」

詩月はゆっくりとピアノへ向かう。


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