君と奏でるノクターン
荒々しく流れ落ちる16分音符の6連符と、左手の跳躍の連続。


「数ヶ所、音が狂ってるわよ」と言ったピアノ奏者の助言と不安など、一掃するように曲を奏でる。

何処をどう調整し、修正しながら弾いているのかどうかさえ、わからない。

小気味良いほど滑らかに、荒れ狂う風、木々のさざめきを歌い上げる。


「あのピアノ、狂ってまともに鳴らない音が幾つもあるんじゃねぇの?」


「ビアンカがいつも苦心惨憺して、誤魔化し誤魔化し弾いてるピアノだぜ」


「初めてあのピアノに触る奴に弾けるような代物じゃないはずだが」


あちらこちらから、ざわめきが起こる。


――ショパン「エチュード作品25第11番イ短調「木枯し」ピアニストの持久力、器用さ、技巧、この3つを鍛えるために作曲された練習曲だ。


ミヒャエルはヴァイオリンで、詩月と共にフランツ教授に師事している。


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