君と奏でるノクターン
「ミヒャエルはヴァイオリン科の学生さ。彼があんな華奢な友人を連れてきたのは初めてだ」


「初めて詩月の演奏を聴いた時は、俺も驚いた。あの華奢さで何て演奏をするのかって」


「繊細で神経質そうに見えるのに、演奏は爆発的でエネルギッシュだな」


「彼はあれでもまだ、本領を発揮していない。もっと内に力を秘めている」


「エィリッヒ!?」


「宗月を越える力、宗月と差しで弾かせてみたい。それで、彼がどんな化学反応をするのか……」

エィリッヒが眼光鋭く、詩月を見つめる。


「ほお、それほどの器か!? あのピアニストは」


「あれは周桜Jr.と呼ばれる程度の演奏家では終わらない……あれは周桜宗月を越えうる天才だ」


「……宗月は気づいているのか!?」


「さあな。詩月が此処で弾く時に、宗月が聴けば気づくだろう。たまには来てるんだろう、宗月は?」

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