君と奏でるノクターン
詩月と周桜宗月を差しで弾かせたら、本気で思う。


――激しさと色彩感を表現するために必要なものは何か?
詩月は熟慮して弾いている。
あの華奢な……折れそうなほど細い指で。
連符の連続、全力疾走で耐久戦のレースをしているような、指を酷使する曲を……あの華奢な指で


ミヒャエルは驚きよりも感嘆、感嘆を通り越し、頭が真っ白だ。


休み前。
学生たちが詩月の噂をしていたのを思い出す。

――「周桜詩月は周桜宗月の完コピーをしていた時期があったそうだ」

ミヒャエルは冗談だろうと失笑した。

が、それがあながち冗談などではないと思い始めていた。


――あの実力なら、周桜宗月の完コピーも有り得る。
「周桜宗月は2人いらない」詩月の心の叫びが聞こえてくるようだ


ミヒャエルは曲を弾き終えた詩月に、拍手と歓声を送る。


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