君と奏でるノクターン

2話/愛それはナイフ

宗月はコンサートホールを出て、コートの襟を立てる。


「ハインツ。冷えるな、今日は」

マネジャー「ハインツ」と共に、雪道を歩く。

淡雪が、肩先に落ちては消えて行く。


「1杯やるか」


「いいね」


木造の古い扉を開けると、様々な音が溢れる。


「よう、来たか」


「相変わらず、忙しそうだな」

宗月は「お陰様で」と笑う。

カウンター席にハインツと並んで座る。


「1日早ければ、面白い演奏を聞けたのに」

マスターがカウンター越しにカラカラと笑う。


「面白い演奏!?」


「ああ、華奢で綺麗な顔をした日本からの留学生」

マスターはわざと遠回しに言ってみる。


「ほお? あの堅物がね」

宗月は意外だという顔をする。


「ショパンの『木枯し』を弾いていった……胸が震えたよ。風に踊らされる木枯しが見えるようだった」
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