君と奏でるノクターン
――え!? この曲「アヴェ・マリア」でテンションを上げる?
何を考えている?

ミヒャエルが眉間に皺を寄せ、怪訝そうにしているのを知ってか知らずか、詩月はお構いなしで鍵盤に、指を走らせる。


――ん……!?

ミヒャエルはヴァイオリン弾きながら、違和感を感じ、耳を澄ませる。


アヴェ・マリアに混じり、何かの曲が聴こえる。


「何、この演奏!?」


あちらこちらから、声があがる。


――詩月!?
ピアノの音色の、右手と左手で弾いている曲が違う


ゆっくりとした穏やかな曲が重なる。

――この物悲しい旋律は、どこかで聴いたことがある曲だ


ミヒャエルは、つい最近この旋律を聴いたなと思う。

いつだったか、何処だったかを考える。


――あ……!

ミヒャエルは一瞬、指が止まりそうになるのを何とか堪え、ヴァイオリンを弾き続けながら、詩月をみつめる。



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