君と奏でるノクターン
「君、すまないが追いかけて様子を」


「はあ?」


「あの様子だと駅まで半時間……或いは途中で」


「はあ、半時間って!? 駅まで300メートルもないのに。途中でって!?」

宗月は、眉間に皺を寄せた不安げな顔で、ミヒャエルを見上げている。


「顔色が優れなかった。平静を装おってはいたが」

ミヒャエルはハッと顔を上げ、店を飛び出した。


「あのバカ」

十数メートルも走らない内に、詩月に追いつく。

胸に手を当て、ゆっくり歩く詩月。

ミヒャエルは、初めて詩月を呼び止めた時を思い出す。


――あの時も、胸に手を当てて……

ミヒャエルが声をかけようとすると、詩月が後ろを振り返った。


「何か用でも? それとも、あの人……父に頼まれたのか?」


「――!?」


「師匠夫妻は父に毎日、連絡を入れてる。マルグリット、師匠の奥さんは観察ノートをつけてるほどだ」


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