君と奏でるノクターン
詩月は十数歩ごとに、立ち止まり呼吸を整える。


「出掛けと帰宅時には必ず、額に手を当てて、熱を確かめるんだ」

ミヒャエルは歩調を合わせながら、黙って聞いている。


「……ペースメーカーを入れてるんだ」


詩月は胸に、手を置いてフッと、息をつく。


「マルグリットの側でスマホを開くと、誤作動を心配して、不安げな顔をされるし、少し咳き込むと直ぐに……薬を飲ませようとする」

ゆっくり歩く詩月に、ミヒャエルは時間が気になる。


「レッスンは何時からだ? 間に合うのか?」


「……今日は、ヴァイオリンのレッスンはない。ピアノのレッスン帰りに寄ったんだ」


「レッスンがあるって!?」


「気まずかったから……あんな会い方をしたくなかった」


「留学して1度も連絡をとってなかったとか?」


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