君と奏でるノクターン
「詩月らしいな……口では宗月に敵わないと言いながら、内には挑む意志を秘めている。
クレアの思いも詩月はちゃんとわかっている」


「彼奴、頼りなげで凄く弱そうに見えるのに、実際は凄く強いんだな」


「そう……強くなった。5年前の、声も出せずに泣いていた詩月が……」

詩月と宗月の奏でる「懐かしい土地の思い出」が、心地よく響く。


「あんなに真剣な宗月は初めて見る。宗月の『ラ·カンパネッラに』詩月がどう挑むのか」

ハインツが感慨深げに、舞台を見つめる。

一呼吸後。
いきなり鳴り始めたピアノとヴァイオリンの音。
ミヒャエルとハインツは、目の覚めるような甲高い音色に、身を乗り出す。


「これは……初めて合わせたとは思えない」

ハインツの深い溜め息。


「宗月の『ラ·カンパネッラ』に、これほどピタリと合わせるヴァイオリン演奏は知らない」

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