君と奏でるノクターン
「どうした、お前がそんな顔なんて」


「どうしたもこうしたもない……アンコールに1曲なんて」

仏頂面のまま、詩月の苛ついた溜め息。


「いいチャンスじゃないか、周桜宗月に堂々と喧嘩売れるんだぜ」


「はあ?」


「しかも周桜宗月のコンサートで」

ミヒャエルは、詩月を挑発するようにニヤリ。


「……付いてないな」


「ん!?……熱でもあるのか」

ミヒャエルは詩月の額に、そっと手を当てる。


「冷たくて気持ちいい」


「おい、ウソだろ!? そんな熱で」

詩月の額に手を置いたまま、ミヒャエルは言う。


「朝から調子が少し……病院へは行ってきた。薬で抑えてる」


「大丈夫なのか」


「ヴァイオリンは2曲どうにか弾けても……『革命』や『木枯し』のような激しい曲は……無理だ」


「ったく、無茶をする」

詩月は溜め息をつき、ネクタイを緩める。

「ミヒャエル、黙ってろよ」

詩月は、サッとコートを羽織る。


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