君と奏でるノクターン
「電話にも出ない……」


「まさか、さっきの電話は……詩月は音合わせ中だからと……」


「遠くへは行ってないはずだが……ミヒャエルに連絡を」

ハインツが宗月の顔を見て、スマホを取り出す。


「ユリウス、ハインツ。弾かせてやりたい」


「熱が39度近くあるんだぞ」


「その熱をおしても、詩月はヴァイオリンを弾こうと抜け出したんだろう」


「無茶苦茶だ」


「熱があることなど、全く感じさせない音色だった」


「バカな……」


「知らないふりをして、弾かせてやりたい」


「宗月、無茶を言うな。演奏中に倒れでもしたら……」


「コンサートは台無し、詩月は……」

宗月はフッと、穏やかに笑う。


「宗月!?」


「それでも……詩月は覚悟して弾きに来たってことだろう」


「決まりだな」


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