君と奏でるノクターン
「いろんな弾き方をするんだよな。街頭演奏、聴いたことがあるけれど……」

「留学生でスゴい演奏する男の子がいるって噂、知ってる?」

「たしか……フランツ教授に師事してるはず」

「!? フランツ教授って、首席クラスの学生しか教えないって評判よ」

「もしかして……彼?」

ピアノを弾く詩月に視線が集中する。

カフェ内が騒然となる。

「何者なの!?」

「あのミヒャエルと合わせて、遜色がないどころか……圧倒的にリードしてるなんて」

「周桜詩月、管弦楽専攻の留学生。つい先月までNフィルのソロヴァイオリニストだった。数年間、低迷気味だったNフィルを契約後、数ヶ月で客席を満員にし、客層を大幅拡大させたのが彼だ。契約直後の公演を除き、昨秋から今秋10月までの全公演で、チケットは完売だったらしい」

低い声が静かに、女子学生の頭上に降る。




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