君と奏でるノクターン
ミヒャエルの頭の中。

「ROSE」の旋律と歌詞が繰り返される。


――こんな華奢な体で


ミヒャエルは詩月の細く長い指を見る。


――痛々しい爪の色だ。無茶をし過ぎる


ミヒャエルは思いながらも、頑張れと声をかけたくなる。


「ミヒャエル、これを彼に。体を少し暖めたほうがいい」

ミヒャエルが受け取ったカップから、ジンジャーの香りがする。

紅い液体から湯気が上がっている。


「マスター、何これ?」

詩月の前に、カップをそっと置く。


「生姜紅茶だ」


「……調子悪くて寝てると、母がよく淹れてくれた」

マスターは自慢げに、生姜紅茶の蘊蓄を披露する。


だけど、ミヒャエルの頭には殆ど理解できなかった。


「……甘いのは苦手なんだけど、生姜紅茶だけは飲める」

詩月はカップを手にとり、両手で包みこむように、カップの中を見る。


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