君と奏でるノクターン
「君の胸の内には音楽を心から愛する気持ちがあるだろう。宗月に届けたい思いがあるだろ」


「僕の……」


「そう、ここだ」

エィリッヒは、胸を強く叩いてみせる。


「ん……」

エィリッヒは頷いた詩月の目に、落ち着きが戻ったのを確認する。


「大丈夫だな」


「はい」

エィリッヒに支えられ、舞台袖まで歩く。

舞台袖から、宗月の姿をみつめる詩月。

ハインツとエィリッヒが、顔を見合わせる。

「詩月、行け。『シレーナ』を思い切り歌わせろ」

詩月の体の震えは治まっていた。

ゆっくりと舞台に向かい、ピアノの側に立つ。

颯爽とヴァイオリンを構え、ヴァイオリンのボディをトンと指で鳴らす。

宗月のピアノと詩月のヴァイオリンが、同時に歌い始める。


冴え渡るヴァイオリンの音色。

音合わせの時とは明らかに音色が違う。

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