君と奏でるノクターン
ピアノとヴァイオリンの絶妙のハーモニーが、会場いっぱいに響いている。


――凄まじい……鬼気迫る演奏だ

ユリウスは、普段のレッスンからは想像できない詩月の音色に、驚いている。


――Nフィルの比ではない。これが……詩月の音色


背筋が凍りつくほど圧倒される。

観客の視線が、細身で華奢な、まだ幼さの残るヴァイオリニストの容姿に集中している。

ノスタルジックな調べ「懐かしい土地の思い出」――。
観客は、望郷の思いをこめた旋律に、様々な情景を思い浮かべる。

観客がパンフレットに、記入されたヴァイオリン奏者ではないことさえ、もはや忘れるほどの演奏。


――今日の周桜宗月のピアノは、いつもと違う


常連の観客たちは、感じていた。

周桜宗月のピアノに、全く遜色ないヴァイオリン演奏。


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