君と奏でるノクターン
――詩月、頑張れ

ハインツは舞台袖、心の中で懸命にエールを贈る。

ユリウスは祈るような思いで、舞台上の詩月を見守る。

エイリッヒは詩月の音色の輝きに、目をみはる。


――周桜宗月相手に、何て演奏をするんだ


ミヒャエルは悔しさを通り越し、詩月と宗月の演奏に感極まり、今すぐにでも歓声を送りたい気持ちだった。

神々しさと慈愛に満ちた宗月のピアノの音が、詩月の胸に染み渡っていく。


――父さん

「ラ·カンパネッラ」最後の1音を鳴らし、詩月の瞳に涙が溢れた。


怒涛のような拍手と歓声を聞きながら、詩月は宗月に向かって深々と頭を下げる。

宗月は立ち上がり詩月に駆け寄り、頭を撫で肩を抱き寄せる。

ふらつく詩月の体を支え、ゆっくりと舞台袖に向かう。

舞台の照明が落とされる。
歓声は鳴り止まない。

アンコールの声がしだいに大きくなる。
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