君と奏でるノクターン
澄んだ音色がゆっくりと奏でられる。

美しい旋律は、ざわめきを静め、観客の耳を惹きつける。

ミヒャエルの頭に「ROSE」の歌詞が浮かぶ。


――「ヴァイオリンは2曲どうにか弾けても……『革命』や『木枯し』のような激しい曲は……無理だ」


音合わせ後、詩月が漏らした言葉が思い出される。


――曲を弾ける状態ではないはずだ。最後まで弾けるかどうかも危うい

ミヒャエルは舞台上の詩月を、食い入るように見つめる。

静まり返った客席に、詩月の奏でるピアノの音だけが響いている。

優しく暖かな演奏。
柔らかな歌声が聞こえてきそうなピアノの調べ。

ピアノを奏でる詩月の姿、奏でる音色に胸が熱くなる。


僅かにアレンジを加えた演奏、1小節よりも2小節、更に3小節、ロンドのように繰り返される旋律が変化していく。

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