君と奏でるノクターン
ミヒャエルは酒場で聴いた「ＲＯＳＥ」よりも、今弾いている「ＲＯＳＥ」に胸が震える。

宗月は詩月の「木枯し」を聴いた時よりも、今弾いている「ＲＯＳＥ」に胸が高鳴っている。

舞台袖から見える詩月の後ろ姿。
詩月の肩が忙しく上下する。

エイリッヒとユリウスは、愛弟子の演奏を客席からでなく、更に間近に聴くため、舞台袖で聴いている。

――開演前の様子からは、信じ難いピアノ演奏だ

２人は共に、詩月の気迫に驚いている。

客席から、幾つもの感嘆の溜め息に混じり、啜り泣く声が聞こえる。


「何て優しい音色で演奏するんだ。何て思いのこもった……なあ、ハインツ。これは詩月の……」


「そのようだな。周桜Jr.と呼ばれることに苦しんで、ショパンを封印し、ピアノをやめようとまで悩んで……」


「ハインツ!?」


ハインツの言葉に、エイリッヒが後を続ける。

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