君と奏でるノクターン
ユリウスが力強い声で言う。


「詩月はお前を越えるピアニストになる。近い将来、必ずな」

エィリッヒが自信満々に言う。

ユリウスがその隣で大きく頷く。


「そうだな。一昨日の『木枯し』を聴いた時、感じたよ」


「覚悟しておけよ」

エィリッヒとユリウスが声を合わせる。


「まだ追い抜かれるわけにはいかんよ」

ハインツ、エィリッヒ、ユリウスに挟まれて言いながら、宗月は嬉しそうだ。


「いいBGMだな。今日の歓声は、詩月に持って行かれるな」

エィリッヒが染々言う。

詩月のピアノ演奏が静かに終わると、まさにエィリッヒの言葉通り。

「ブラボー」と「詩月」コールの嵐だった。

詩月はゆっくりと立ち上がる。

ふらついた詩月の体がぐらりと揺らぐ。

詩月の体が沈みこむ刹那、宗月がしっかりと、詩月の肩を抱き支える。

総立ちの客席、歓声と拍手は更に大きく鳴り響く。

宗月は片手を上げ、歓声にこたえる。

そして高らかに声を張り上げた。


「ピアニスト、周桜詩月の誕生だ」


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