君と奏でるノクターン
「何々――周桜宗月のコンサートが圧巻だった。
代役のヴァイオリン奏者の『ラ·カンパネッラ』が周桜宗月に全く遜色ない演奏だった。
晩秋から、ウィーンケルントナー通りで、街頭演奏をしている日本からの留学生だ。
クリスマス仕様の市庁舎前広場より、人気を集めている。
そして……アンコール、彼の演奏したピアノ『ROSE』がこの日、全ての歓声をさらった。
『詩月』――彼は周桜宗月を越えうるピアニストに違いない……」

理久が一気に読み上げた。


「周桜は自分の実力をもっと自覚するべきだ」


「へぇ………親父さんと共演したんだ」


「……周桜くんは、どんどん先へ行くのね」

郁子が、しょぼくれた元気のない声を漏らす。


「郁、落ちこんでる場合か?」


「でも……」


「郁子くん、はい」

マスターが、郁子の席にコトリ、カップを置く。


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