君と奏でるノクターン
「仕掛けるのは、いつもこちらで、優等生ぶった君の演奏が嫌いだった」

ミヒャエルが、澄まし顔で話す詩月を睨む。


「フランツ教授に師事してる学生たちの演奏……上手い奴ばかりだって思う。だけど……それだけだ。何も伝わって来ない」

ミヒャエルの顔が険しくなる。

「何を言い出すんだ、こいつ」とでも言いたげに。

酒場の客も、詩月の声に耳を澄ませる。


「ずっと思ってた。フランツ教授は、完璧に弾くヴァイオリンマシーンばかりを育てているのかって」

詩月は顔を上げ、ミヒャエルを見る。


「心に響く演奏、ちゃんとできるじゃないか」

クスリ、微かに笑う。


「ヴァイオリンマシーン、こいつぁ~面白い。大人しそうな顔して言うじゃないか」

客席から高笑いが響く。


「信じらんない!! あなたって、そういうキャラ!?」

ピアンカが目を丸くし、悲鳴じみた甲高い声で言う。
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