君と奏でるノクターン
酔った客、ほろ酔いの客、威勢のいい客に絡まれながら、様々な客の相手を交わしていく。


――凄いな。学生の面倒見がいいわけだ


詩月はミヒャエルの様子を目で追いながら、ミヒャエルの人懐っこい笑顔や客とのやり取りに感心する。


曲が終わると、すぐさまリクエストをしてくる客。

詩月が断りきれずに、ヴァイオリンを弾こうとするのを、ミヒャエルが詩月の肩を叩いて首を振る。


「リクエストもひっきりなしでは、休む間がないだろ」

ミヒャエルが低い声を張り上げる。


「お前は無茶をしすぎる」

ミヒャエルは言いながら詩月を強引に、カウンター近くの席に座らせる。


「4時まで長丁場だ。しっかり食べて、体を休めてろ」

険しい口調だが、ミヒャエルの優しさが詩月の胸にずしり伝わる。


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