君と奏でるノクターン
「二重奏をする曲は大丈夫なのか?」


「問題ない。あちらとのパソコン通信も、大画面のセッティングも万全だ。後は電話するだけ」


「理久とかいう、お前の幼なじみが、お前のセッティングを心配して丁寧に画像と通話で確認してきた」


「……理久はいつも過剰なくらいガキ扱いするんだ」


「お前には、あのくらい過剰に構う奴がいて丁度いい」


「君は……理久に似ている」

詩月はクスッと小さく声を漏らし、思い出したように笑う。


「――ふん」

マスターが、流しに食器を置いたミヒャエルを呼ぶ。

カウンターの上に、小皿におにぎり2つと、スープカップに味噌汁、角皿に玉子焼き、箸1膳。


「これって、詩月に?」


「黙って持っていけ」

ミヒャエルは間延びした返事をし、トレイに乗せ詩月の元へ運ぶ。


「これっぽっちで腹いっぱいになるのか?」
< 213 / 249 >

この作品をシェア

pagetop