君と奏でるノクターン
古い扉が音を立てて開くのに合わせ、扉に着けたベルが鳴る。

冷たい風が扉の隙間から吹き抜け、扉近くの客がぶるっと体を震わせる。


「待ちくたびれたぜ」


「1曲、練習にてこずってね」

コートの襟を立て、店に入ってきた4人の男達は、暖炉の側の席に陣取り、体を暖める。


「例の曲かい!?」

マスターが男達の席に酒と料理を運ぶ。


「詩月がピアノで弾いていた時は、さほど難しそうではなかったんだがな」

銀縁眼鏡を掛けた男が、ヴァイオリンを取り出しながら、首を捻る。


「ユリウス、そりゃそうだろ、詩月が書いた曲なんだから」

アッシュグレイの髪の男が、詩月の様子を気にしながら、起こさないように小声で言う。


「ん……そうかな、どうも違う気がするんだが」

ユリウスは楽譜を取り出し、念入りに見つめる。

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