君と奏でるノクターン
騒がしく談笑していた客の目が、ピアノに注がれる。

賑やかだった店内に、静寂が訪れる。

雪がしんしんと降るような、繊細なピアノの音色が響く。

ただならぬ空気を感じて薄目を開けて、辺りを見回す詩月。

その耳が、宗月の弾くピアノの音色を捉える。


「あ――」

詩月は呟いたまま、演奏する2人の姿に唖然としている。


「……ヴァイオリンロマンス――、何故!?」

エィリッヒが碧い目を大きく見開いたまま、固まっている詩月の肩に、そっと手を置く。


「水くさいな、CD化される曲だそうじゃないか」


「エィリッヒ? 誰から……」


「マイスターから聞いたんだ」


「ジョルジュ……」


「楽譜は横浜の、理久と貢に頼んでファックスしてもらった」


「理久と安坂さんが……」


「この難曲をデュエットなんてな。余程、自信があるのか? 無謀なのか……君は大胆なことをする」

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