君と奏でるノクターン

4話/In the spring becomes the rose.

宗月とエィリッヒが、肩を並べてピアノを弾く。

共に腕前を競うように。



――僅か2日で合わせたとは、とても思えない


詩月は苦心惨憺して興した楽譜を、いとも簡単に演奏されている気がして、胸の内で燻る苛立たしさを抑える。

ユリウスのヴァイオリンが宗月とエィリッヒ、2人のピアノにピタリ寄り添う。

合奏は「こうあるべきだ」と主張するような、圧倒的な演奏だ。

これ以上はないだろうと言う、自信が感じられる。



――大学裏門の像の下で聴いた曲。
あの時、感じた優しさと慈愛に満ちた音色とは……違う。
心の奥底へまで染み入るように響いた暖かさ……オルフェウスとエウリュディケの奏でた音色は――もっと優しかった


詩月は首を傾げ立ち上がり、急ぎヴァイオリンを構える。

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