君と奏でるノクターン
「Musik-Herz」

郁子は再び呟いて、楽譜を並べピアノに指を構える。

郁子の指が緊張で震える。
弾き始めるのを躊躇う郁子の上着のポケットで、郁子のスマホがバイブする。

郁子はハッとし、スマホを取り出し操作する。


――Frohe Weihnachten,Ogata.
Wie geht es dir? Kann ich starten wann immer Sie wollen


「あの、周桜くん!?」


――あっ……すまない。先ず、Merry Christmas. 調子、大丈夫か?


「Merry Christmas. 体調は大丈夫。でも……上手く弾けるかどうか、スゴく不安なの。ちゃんと弾くのがやっとで、すっごく下手だと思うの」


――緒方、君が一生懸命練習してきたのはわかってる。
アップライトピアノでは弾けないような難曲だ。
完璧は求めない。
君と演奏したい。君と楽しく弾きたいんだ



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