君と奏でるノクターン
訳もわからず、電話を切られる不安に、郁子は声を張り上げる。


「えっ!? 何、周桜くん?」


――……友人と一緒なんだ、後で連絡する


素っ気ない電話越しの言葉、詩月の細い掠れ声がプツリと切れる。


「何だったんだ?」


「ドイツ語だったのかな、何を言ってるのか、よくわからなかった……誰かと揉めてたのかな?」


「で!?」


「友人と一緒だから後でって……」


郁子は元気なく呟く。


「言葉がわからないって辛いね。離れてるって……辛い」


「郁?」


「わかってるつもりだったのに」


「大丈夫か? 寂しいなら、はっきり言っていいんじゃないか?」


貢が郁子の頭を優しく撫でる。


「ちゃんと返信しろって、周桜に言っていいんじゃないか? 遠慮せずに」
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