君と奏でるノクターン
画面に映る細身のヴァイオリニスト。
淡い茶系の柔らかそうな髪、濃紺の膝丈コートに長めのマフラーを粋に着こなし、颯爽とヴァイオリンを弾いている。
碧みを帯びた大きな目を、高音を鳴らす時、数秒閉じる癖、曲の情景を思い浮かべるように、表情豊かに弾く。
巧みに、弦を押さえる細く長い指。
詩月のヴァイオリン演奏に聴衆が、感嘆する声。
周囲のざわめきを気にする様子もなく、ただヴァイオリン演奏に集中している姿。
――変わっていない。
横浜の街頭や公園で、演奏していた頃と同じ。
益々、澄み冴え渡る音色以外は、何も変わっていない。
周桜くんの演奏は健在だ。
郁子は画面の中、詩月の元気な姿を確認し、「言葉なんていらない」と感じる。
「理久、画像のURL送信して」
「おう、……少しは元気が出たか?」
スマホを操作しながら、理久が訊ねる。
淡い茶系の柔らかそうな髪、濃紺の膝丈コートに長めのマフラーを粋に着こなし、颯爽とヴァイオリンを弾いている。
碧みを帯びた大きな目を、高音を鳴らす時、数秒閉じる癖、曲の情景を思い浮かべるように、表情豊かに弾く。
巧みに、弦を押さえる細く長い指。
詩月のヴァイオリン演奏に聴衆が、感嘆する声。
周囲のざわめきを気にする様子もなく、ただヴァイオリン演奏に集中している姿。
――変わっていない。
横浜の街頭や公園で、演奏していた頃と同じ。
益々、澄み冴え渡る音色以外は、何も変わっていない。
周桜くんの演奏は健在だ。
郁子は画面の中、詩月の元気な姿を確認し、「言葉なんていらない」と感じる。
「理久、画像のURL送信して」
「おう、……少しは元気が出たか?」
スマホを操作しながら、理久が訊ねる。